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2025.05.09

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連載記事「自律的な改善を継続させる」第2回反発・無関心な現場を変えたアプローチ ~プロジェクト成功に欠かせない、現場巻き込みの手法とは~

連載記事「自律的な改善を継続させる」第2回反発・無関心な現場を変えたアプローチ ~プロジェクト成功に欠かせない、現場巻き込みの手法とは~

「改善くらい自分たちでできる」。外部の力を借りずに取り組み始めた改善活動。しかし待っていたのは出口の見えない挫折でした(第1回)。

乾いた喉に

5年もの間、製造部長を中心に取り組んだ自力での改善活動。残念ながら成果は得られず、現場の意識も変わらないまま。うつむく製造部長の目の前に差し出されたのは、5年前に断ったOJTソリューションズのパンフレットでした。経営陣が5年前に言っていた「嫌々(OJTソリューションズの)サービスをやってもらっても意味はない。自分たちにとって必要な”飲みたい水”になるまで待とう」という言葉。まさに、その瞬間がやってきました。

製造部長はあらためて社長と改善について話す場を設け、トヨタ出身のトレーナーに現場を見てもらう、という決断をしました。トヨタが大事にしていること、トレーナーが人として大事にしていること、トレーナーの視点で見た現場の課題。一日かけてじっくりと話し合い、ついにサービスが導入されることとなります。しかし、サービスを入れたからといって魔法のように現場が変わるわけではありません。製造部長とトレーナーを待ち受けていたのは、現場の反発と無関心でした。

不良そのものを起こさないために

この菓子メーカーの商品は贈答品として購入されることが多く、包装に仕上がりの美しさが求められます。しかし、これまで毎年膨大な不良を出してきており、そのたびに手作業で包装紙を破り捨てては再び包装工程に戻すことを余儀なくされていました。人件費や資材費など、原価管理を長く圧迫し続けてきたのです。

まずOJTソリューションズのトレーナーが取り組んだのは、「問題解決の8ステップ」をしっかりメンバーに身に付けさせることでした。問題解決の8ステップとは、問題に対する徹底した原因追究を通じ二度と不良が再発しない対策を見つけ出し、それを標準化して他工程にも横展開するという、トヨタが長年実践してきた改善のための中心的な考え方であり、手法です。

包装担当メンバー
「包装不良の半滅」を目指し、問題解決の8ステップで時間をかけて問題を層別していくと、最も多かったのは「糊付け不良」。液状の糊を包装紙に噴射して接着するのですが、指定の位置からはみ出して汚したり、糊が十分につかなかったりしていました。しかし、私も含めて、不良がこれくらい出るのは当たり前のことと感覚が麻痺していましたね。」

「だから、不良が続いてきたらラインを止めて噴射ノズルを掃除するという対応に留まっていたのですが、トレーナーに言われたのはそもそも不良を生み出さないための対策を考えるべきだと。」

そうした意識改革のもとで進められたのは、糊を押し出すポンプの圧力調整でした。

包装担当メンバー
「糊は時間が経つとノズルの穴付近で乾いて固まりをつくり、噴射方向を乱す。これに対し、『なぜなぜ』を徹底して繰り返し、要因解析で特性を絞り込んだところ、噴射圧力を上げることによって糊がノズルに詰まらなくなることが分かったのです。しかし、上げすぎると包装紙に糊が付きすぎてしまうし、ノズル周りに多くの糊が飛び散って逆に固まりができやすくなる。実験を重ねて最適な値を求めていきました。」

「また、糊が固まらない状態を保つため、何個包装したらノズルを定期メンテナンスするかを決めるなど、不良を事前に防ぐルールづくりにも着手し始めました。」

アンケートで改善への参加意識をつくり出す

しかし、ここまではプロジェクトに専任しているメンバーたちだけの活動に留まっていました。

包装担当メンバー
「少しずつ成果を挙げてきても、周りの目は冷ややか。兼任メンバーは自分の仕事が忙しくなると来なくなる。機械を観察しようと近づくと、ラインの担当者は勝手にどうぞと無関心を決め込んで後ろに下がってしまう。ひいては、トレーナーに向かって機械に触るなと声を荒げて反発する者すらいました。」

「しかし、『包装の不良半減』という大きな目標を達成するには、定期的なメンテナンスや不良発生時の迅速な対応が重要であり、現場の巻き込みが欠かせなかったのです。」

トレーナーから指導を受けて包装担当メンバーが取り組んだのは、責任を現場の個々人にきちんと持たせるため、6つある包装機ごとに機械担当を決めたことでした。さらに、いくつ不良が出たら機械担当を呼ぶかなどのしくみを現場全員で考えさせ、改善活動を「自分ごと」として捉えさせました。そこで大きな役割を果たしたのは、アンケートでした。

包装担当メンバー
「私自身の答えを持ちつつも、現場全員にアンケートを実施。そこで出たアイデアの中から対策を採用することで、活動への参加意識を醸成していきました。『どうせ言っても無駄』と諦められてしまうのが一番良くない。私が考えていた答えと近いものがあるとホッとしましたが、現場から上がった意見に挑戦することで皆のやる気を引き出し、巻き込みを図っていきました。トレーナーから教えてもらったのは、『アンケートをとる』という特別な仕掛けではなかったものの、向き合い方次第でこんなにも現場を巻き込むことができるのかと驚きましたね。」

一連の取り組みは、生産性向上担当メンバーも同様の道をたどりました。

生産性向上担当メンバー
「生産性14%向上を目指して、コンベアスピードを上げてみたり、逆に下げてみたりして、商品をより多く滞りなく流そうとしましたが、なかなか良い手立てが見つかりませんでした。そこで、コンベアの方向転換に用いられるセンサーに着目。プログラムがわかる者を巻き込んで、方向転換のタイミングを調整することで、改善の道筋をつけることができました。」

「また、パート社員を含めてアンケートをとり、これまで個々が問題と感じていながらも口にして来なかったことを掘り起こしながら、解決に向けてコンベアにかかわる皆で一緒に考えていくことを大切にしました。」

その結果、上述のとおり「包装の不良半減」「生産性14%向上」を6カ月で達成できました。急に商品が多く流れるようになったため、検査人員が足りなくなるという嬉しい悲鳴も上がりました。

変わり始めた現場の雰囲気に経営陣も高い期待を寄せ、いよいよ望まれたのは、プロジェクト最大の方針として掲げられた「量から質への体質改善」でした。

連載記事はこちらから。
第1回 「改善くらい自分たちでできる」~その先は出口の見えない挫折だった~
第3回 「25年変われなかったのに……」〜諦めを覆した問題解決の8ステップの秘密は「層別」にあり!~
第4回 改善は生産現場だけじゃない!~販売スタッフの行動も数値化 ムダ取りから接客を充実~(5月23日公開予定)

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