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2024.07.09

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7つのムダとは?トヨタ生産方式の考え方や改善の具体例も解説

7つのムダとは?トヨタ生産方式の考え方や改善の具体例も解説

安田 幸治

監修者

安田 幸治

OJTソリューションズで、 お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて42年間の現場経験、管理職の経験を経てOJTソリューションズに入社しました。モットーは「仲間に感謝」。時に愛犬に癒されながら、日々お客様の現場で感謝・改善・努力の毎日を過ごしています。

ムダを排除することで、経費削減や売上アップなどが期待できるだけでなく、管理者や従業員の負担軽減にもつながります。しかし、改善の経験が浅い人にとって、ムダを見つけるのは容易ではありません。

現場のムダを排除するには、まずはトヨタの「7つのムダ」の視点を知っておきましょう。本記事では、それぞれのムダの内容と改善事例を詳しく紹介します。

業務改善に課題を感じている企業や、原価低減を目指している企業の方はぜひ最後までご覧ください。

7つのムダとは?トヨタに学ぶムダの定義を紹介

ムダとは、仕事をする上で必要のない動きやモノを指します。7つのムダとは、トヨタ式改善の中でムダを発見する視点であり、現場で起こりやすい代表的なムダを体系的に整理したものです。具体的には以下の7つです。

  • つくり過ぎのムダ
  • 手待ちのムダ
  • 運搬のムダ
  • 加工そのもののムダ
  • 在庫のムダ
  • 動作のムダ
  • 不良・手直しのムダ

これらのムダは相互に関連しており、一つのムダが他のムダを誘発することもあります。例えば、「つくりすぎのムダ」は「在庫のムダ」を生み、それが「運搬のムダ」や「動作のムダ」につながります。そのため、7つのムダを体系的に理解し、優先順位をつけて改善することが重要です。

トヨタ式改善の目的は、業務における「ムダ・ムラ・ムリ」を発見し排除することで仕事の付加価値を高めることです。「7つのムダ」の視点は、「ジャストインタイム」や「自働化」などの概念とともに、製造業に取り入れるべき基本的な考え方です。

トヨタ生産方式における「7つのムダ」の位置づけ

トヨタ生産方式(TPS)は、現場のムダを徹底的に排除することで、品質・効率・柔軟性を高める生産のしくみです。「7つのムダ」は、TPSの実践においてムダを見つけるための視点として活用されます。これらのムダを見える化し、改善することで、TPSの柱である「ジャストインタイム」や「自働化」が機能しやすくなります。

・ジャストインタイム(JIT):必要なものを、必要なときに、必要なだけ生産するしくみ
・自働化:異常が発生した際に機械が直ちに停止し、不良品をつくらない、流さないしくみ

たとえば、「つくり過ぎのムダ」や「在庫のムダ」を減らすことで、必要なものを必要なときに生産するジャストインタイムが実現し、「不良・手直しのムダ」を減らすことで、自働化による品質保証が強化されます。つまり、7つのムダの削減は、TPSの考え方を現場で具体的に実践するための第一歩であり、改善活動の土台となるものです。

7つのムダのそれぞれの定義と改善手法を紹介

ここでは、7つのムダのそれぞれの定義と改善手法を紹介します。

「つくり過ぎのムダ」の定義と改善手法

つくり過ぎのムダとは、必要以上に多く、または早く生産してしまうことを指します。このムダは在庫のムダや運搬のムダなど他のムダを誘発しやすく、トヨタでは「最も排除すべきムダ」とされています。

例:

  • 手が空いているからといって必要以上につくり貯めをしておく
  • オーダーが入っていないのに先に料理の仕込みをしてしまう
  • 年に1度しか使わない製品パンフレットを大量に印刷して保管する

つくり過ぎのムダが発生する主な原因は、需要予測と生産計画の精度不足です。また、「たぶん必要になるから念のため」という心理的安心感も影響するでしょう。

つくりすぎのムダをなくすためには、まずは「手が空いているからつくろう」「念のためつくろう」といった行動を見直し、計画に基づいた生産を徹底することが重要です。

つくりすぎのムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
つくりすぎのムダとは?なくす方法や「最大のムダ」と言われる理由も解説

「手待ちのムダ」の定義と改善手法

手待ちのムダとは、作業者が次の作業に進めず何もすることがない状態のことです。

例:

  • 部品が揃わないため組み立て作業が止まる
  • 自動で加工する機械の横で、ただ待って立っている
  • 上司の承認待ちで契約が先に進まない

手待ちのムダは、工程間のスピード差によって発生することが多いですが、設備の故障や仕入れ先の運搬遅延など、イレギュラーな要因での手待ちも現実では多数発生します。

まず始めるべきは、手待ち時間を視える化して把握することです。何が原因による手待ちが多いかを特定し、優先順位を付けて改善していきましょう。

手待ちのムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
手待ちのムダをなくす3つの方法!手待ちのムダの定義もあわせて解説

「運搬のムダ」の定義と改善手法

運搬のムダとは、付加価値を生まないモノや情報の運搬、流れのことです。そもそも運搬そのものは価値を生まないため、最小限に抑える必要があります。

例:

  • 作業エリアと部品置き場を何度も往復する
  • 荷物を一時的に仮置きし、積み替える
  • デスクとコピー機の間を何度も行き来している

運搬のムダが発生する原因はレイアウトにあることが多いです。基本的には使う頻度が高いものは作業する人の近くに、頻度が低いものは遠くに、というレイアウトが基本です。

また、モノに限らず、情報の流れにもムダが潜んでいます。メールのCCなども運搬のムダとなる場合があるので注意が必要です。

運搬のムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
運搬のムダとは?なくす方法や「情報の停滞」も解説

「加工そのもののムダ」の定義と改善手法

加工そのもののムダとは、品質や機能に貢献しない不必要な加工のことです。会社で決められた基準、もしくはお客様に求められる基準以上の仕上げや加工が含まれます。

例:

  • 目に触れない製品の裏面まで綺麗に塗装する
  • ネジで十分な強度が得られる部品にさらに接着剤を追加する
  • 社内資料にも関わらず、過剰なアニメーションなどの装飾をする

加工そのもののムダの原因の多くは、これでよしとされる基準、このやり方で作業するという標準が曖昧であることです。改善のポイントは、品質基準や作業時間の目安を明確にして過剰な加工を防ぐことで、標準化が鍵になります。

ただし、特にサービス業では基準や標準の定義が難しい傾向があります。例えば営業職の提案資料の品質の基準、と言われてもなかなか言語化しにくいでしょう。品質を定めにくい場合は「何時間以内に完成させる」といった時間で切ることも手法のひとつです。

加工そのもののムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
加工のムダをなくす方法は?概要やオフィスワークへの落とし込み方も解説

「在庫のムダ」の定義と改善手法

在庫のムダとは、必要以上の材料、部品、仕掛品、完成品のことを指します。不要な在庫は保管スペースのコストを生み、在庫そのものが劣化して損失が出ることもあります。

例:

  • 注文から3日で届く部品を1ヵ月分貯めておく
  • 工程間の生産速度に差があり、仕掛品の量が偏る
  • 使用頻度が低い文房具を従業員全員が個別に所有している

在庫のムダが発生する原因は複数あります。いわゆるダンゴ生産と呼ばれる過剰なロット生産方式や、工程バランスの悪さ、「お客様のためには在庫があって当然」という人の意識によるものもあります。

在庫のムダを改善するためには、工程の流れを整え、必要な分だけをタイミングよく供給するしくみを構築することが重要です。今ある在庫のムダを削減するには5S活動の「整理」も有効です。

以下の記事では、5S活動を詳しく解説しています。実施する目的や手順、取り入れるメリットもまとめているので、ぜひご覧ください。
5S活動とは?実施する目的や意味、具体的な手順を解説

また、在庫のムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
在庫のムダをなくす方法は?オフィスワークにおける在庫のムダを例に解説

「動作のムダ」の定義と改善手法

動作のムダとは、付加価値を生まない人の動きのことです。探す、取りに行く、置きに行く、ムリな姿勢の作業、などが該当します。

例:

  • 頻繁に使う工具を探す、毎回取り出して戻す
  • 作業の内容を覚えておらずマニュアルを頻繁に調べる
  • パソコンのフォルダの深い階層から必要なファイルを探す

これらのムダは、作業標準が決められていなかったり、作業環境が整っていないことが原因となります。現状のやり方が当たり前になっているとなかなか気付くことができないため、ビデオ撮影や第三者の視点を活用して作業を観察し、気づきを得ることが有効です。

まず取り組むべきは「探す」動作のムダを減らすことです。1時間に1回、2分間モノを探していたとします。小さく感じるかもしれませんが、8時間労働と考えると1日で16分、20日で320分、5時間以上にもなります。

動作のムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
動作のムダとは?なくす方法や整理整頓の重要性も解説

「不良・手直しのムダ」の定義と改善手法

不良・手直しのムダとは、廃棄や必要な不良品や手直しが必要なモノをつくることです。コストや納期への影響が大きく、廃棄となれば材料費や加工費のロスになり、手直しとなればその分の余分なコストがかかってきます。また、販売機会の損失にもつながります。

例:

  • 仕様書をよく確認せず、誤った色で塗装してしまった
  • パーツの取り付けミスが発覚し、同じロットの製品を全量検査した
  • 誤字がある資料を大量に印刷し、すべて廃棄した

不良・手直しのムダの要因は、指示そのものが間違っている場合、ヒューマンエラーによる場合などさまざまです。単純に品質基準を厳しくすればいい、検査の回数を増やせばいいかというと、そう単純ではありません。

改善手法は複数ありますが、品質基準の明確化、作業者への正しい教育、ミスを検知できるしくみの導入、自工程完結(工程ごとに品質を保証するしくみ)の考え方を取り入れる、などがあげられるでしょう。

不良・手直しのムダに関する具体的な事例や対策については下記記事も参照ください。
不良・手直しのムダとは?なくす方法や自工程完結を達成するポイントも解説

なぜ「7つのムダ」を削減することが重要なのか?―経営・現場・社員への3つの効果

「7つのムダ」の削減は、企業活動のあらゆる面に好影響をもたらします。ムダを減らすことで、経営資源の最適化、現場の効率化、社員の意識向上が同時に進みます。

① 経営への効果:コスト削減と利益率向上
ムダを減らすことで、原価が下がり、利益率が改善します。特に「つくり過ぎ」や「不良」のムダを抑えることで、資金の無駄遣いや販売機会の損失を防げます。

② 現場への効果:作業の流れと安全性の向上
「動作」や「運搬」のムダを減らすことで、作業効率が上がり、現場の動線が整理されます。これにより、事故リスクも低減し、安全で快適な職場環境が実現します。作業負担が減ってラクになる実感を得られることも大きな効果です。

③ 社員への効果:働きがいと改善力の向上
ムダ取りに関わることで、社員は職場改善への貢献を実感できます。改善活動を通じて、問題発見力や提案力が育まれ、組織全体の自律的な成長につながります。

7つのムダの覚え方

「7つのムダ」は、覚えやすい語呂合わせを使うことで、現場でもすぐに活用できます。

  • か:加工そのもののムダ
  • ざ:在庫のムダ
  • つ:つくり過ぎのムダ
  • て:手待ちのムダ
  • ど:動作のムダ
  • う:運搬のムダ
  • ふ:不良・手直しのムダ

頭文字をつなげて「飾って豆腐(かざってどうふ)」と覚えましょう。他のパターンとしては「カザフ鉄道(かざふてつどう)」などもあります。覚えやすい言葉を使って、日々の改善活動に役立てましょう。

まとめ

本記事では、トヨタの「7つのムダ」の視点を解説しました。7つのムダとは、以下の7つです。

  • つくり過ぎのムダ
  • 在庫のムダ
  • 運搬のムダ
  • 手待ちのムダ
  • 動作のムダ
  • 加工そのもののムダ
  • 不良・手直しのムダ

すべてのムダがこの7つに当てはまるわけではありませんが、発見する視点として非常に有効です。業種や職種に応じて視点を追加したり調整してもよいでしょう。

ムダの発見は、現場改善の第一歩です。小さなムダの積み重ねが、大きな成果につながります。ぜひ、日々の業務の中でムダを見つけ、改善につなげてみてください。

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