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2025.12.26

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ジャストインタイム(JIT)とは? 3原則とメリット・デメリットを徹底解説

ジャストインタイム(JIT)とは? 3原則とメリット・デメリットを徹底解説

見城 吉昭

監修者

見城 吉昭

OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車の機械加工にて39年の現場経験を積み、OJTソリューションズに入社しました。趣味の読書や旅行で自分の世界を広げながら、現場で働く人の声を大事に「働く人の心のための改善」に日々取り組んでいます。

「ジャストインタイム」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。製造業や物流業界で頻繁に使われるこの手法は、トヨタ生産方式の中核をなす重要な考え方です。

一方で、近年では「時代遅れ」といった批判も聞かれます。本記事では、ジャストインタイムの基本定義から3原則、メリット・デメリット、そして現代における課題と対応策までをわかりやすく解説します。

導入を検討している企業の方、現場で実践されている方、そして批判的な側面も含めて理解を深めたい方はぜひご覧ください。

ジャストインタイム(JIT)とは?

ジャストインタイムとは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」生産・供給するしくみであり、製造業における効率化を目指す経営思想です。

この考え方の本質は、ムダな在庫の排除などを進め、停滞を減らしリードタイムを短縮する事です。従来の生産方式では、需要予測に基づいて製品を作り置きする「プッシュ型」が主流でした。これに対してジャストインタイムは、実際の注文や需要に応じて生産を行う「プル型」を採用します。

製造現場では、部品や材料の在庫を最小限に抑えながら、顧客の要求に迅速に対応できる体制を構築することで、生産効率の向上とコスト削減を両立します。このしくみにより、保管スペースの削減、在庫管理コストの低減、さらにキャッシュフロー改善といった大きなメリットが得られます。

トヨタ生産方式(TPS)と「かんばん方式」との違い

ジャストインタイムの起源を理解するには、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)との関係を知ることが不可欠です。

TPSの「2本の柱」:「ジャストインタイム」と「自働化」

TPSを支える2本の柱が「ジャストインタイム」と「自働化(にんべんの付いた自動化)」です。

ジャストインタイムが物の流れと生産のタイミングを最適化するしくみであるのに対し、自働化は品質を工程内で作り込み、異常が発生したら機械が自動的に停止するしくみを指します。この2つが相互に補完し合うことで、TPSは高品質と高効率を両立します。

「かんばん方式」はジャストインタイムを実現するための「道具(ツール)」

混同されやすい「かんばん方式」と「ジャストインタイム」の違いは以下です。

  • ジャストインタイム:生産システム全体の思想・理念
  • かんばん方式:ジャストインタイムを実現するための具体的な管理ツール

かんばん方式は、生産指示や部品の引き取り指示を「かんばん」と呼ばれるカードで管理する手法です。後工程が必要な部品を前工程から引き取る際に、かんばんが情報伝達の役割を果たします。つまり、かんばんは情報の流れを視える化し、ジャストインタイムを現場で実践するための道具なのです。

ジャストインタイムを実現する「3原則」

ジャストインタイムを単なる理念で終わらせず、実際の製造現場で機能させるためには、以下の3つの原則を理解し実践することが必要です。

原則1:後工程引取り(プル型生産)

第一の原則は「後工程が、必要なものを、必要な時に、必要なだけ、前工程に取りに行く」というしくみです。

生産方式には主に「プッシュ型」と「プル型」があり、ジャストインタイムは後者にあたります。プッシュ型では、前工程で作った部品を次々と後工程に押し出します。一方、ジャストインタイムでは、最終工程(顧客に最も近い工程)から順番に、必要な分だけを前工程から引き取る「プル型」を採用します。

この方式により、各工程で余分な在庫を抱えることなく、実際の需要に基づいた生産が可能になります。工場全体の生産リズムが顧客の要求と同期し、ムダな作り置きが発生しません。

原則2:工程の流れ化

第二の原則は、物が停滞しないよう生産ラインを最適化することです。

具体的には、U字型のレイアウトやセル生産方式の採用により、作業者の移動距離を短縮し、工程間の仕掛品を最小化します。部品や製品が工場内を川の流れのようにスムーズに流れることで、リードタイムの短縮と品質の安定化を実現します。

流れ化によって、部品や製品が停滞せずに進むため、異常や不具合が発生するとすぐに工程全体の流れが乱れます。この変化が目に見えて分かることで、問題の発見が早まり、迅速な改善につながります。逆に在庫が多く停滞が長いラインでは、問題が隠れやすく、改善が進みません。だからこそ、継続的な流れを維持することが重要です。

原則3:必要数でタクトを決める(タクトタイム)

第三の原則は、顧客の需要に合わせて生産ペースを調整する「タクトタイム」の設定です。

タクトタイムとは、1つの製品を生産すべき時間間隔を示す指標です。例えば、1日8時間(480分)の稼働時間で480個の製品需要がある場合、タクトタイムは1分となります。全工程がこのリズムに合わせて作業することで、過剰生産や不足を防ぎ、適切な生産ペースを維持することができます。また、生産ラインの負荷が平均化され、作業者の負担軽減につながります。

ジャストインタイム導入のメリット

企業がJITを導入することで得られる具体的なメリットを解説します。

在庫の最小化

まずは、在庫の最小化やコスト削減による経営効率の向上があげられます。

在庫を持つということは、資金が製品や部品という形で滞留している状態を意味します。JITの実現により、この「眠っている資金」を最小化し、キャッシュフローを大幅に改善できます。また、倉庫スペースの削減により、固定費の圧縮も可能になります。

具体的な例をあげると、在庫回転率が向上したことにより、運転資金を成長投資に振り向けることができたという事例もあります。

生産性の向上とリードタイム短縮

JITは単なる在庫削減のしくみではなく、生産工程全体の効率化を促進します。

ムダな運搬や作業、待ち時間などを排除することで、付加価値を生む作業に集中できます。結果として、受注から納品までのリードタイムが大幅に短縮され、顧客満足度の向上にもつながります。

品質の維持・向上(問題の早期発見)

在庫を持たないことは、品質管理の面でも大きなメリットをもたらします。

大量の在庫があると、不良品が発生してもすぐには発見されず、問題が潜在化しやすくなります。しかしJITでは、各工程で必要最小限の部品しか持たないため、品質問題が発生すれば即座に生産が停止し、問題の所在が明確になります。

この「問題の視える化」により、迅速な原因究明と改善が可能になり、結果として品質の継続的な向上につながるのです。

ジャストインタイムのデメリット

ジャストインタイムにはメリットがある一方で、課題やリスクも存在します。

外部要因による供給リスク

ジャストインタイムの最大の弱点は、予期せぬ外部要因によるサプライチェーン寸断リスクです。

災害やパンデミック、さらに地政学的な不安定化は、部品供給の継続性を脅かします。2011年の東日本大震災では部品供給が途絶し、多くの工場が操業停止に追い込まれました。また、2020年以降の新型コロナウイルスによる混乱や半導体不足、さらに米中貿易摩擦やロシア・ウクライナ情勢などの国際問題も、供給網に深刻な影響を与えています。

在庫を極限まで減らすJITモデルは、こうしたリスクに対して非常に脆弱です。企業はBCP(事業継続計画)の策定や戦略的な安全在庫の確保、さらにサプライチェーンの多様化・地域化など、柔軟な対応策を講じる必要があります。

急な需要変動に対応しにくい

JITは余分な在庫を持たないという考えから、急な需要増加や予測外の変動に対応する柔軟性に欠けます。市場トレンドの急変や顧客からの緊急オーダーが発生した場合、在庫不足により対応しきれず、欠品や納期遅延につながるリスクが高まります。

この問題は、消費者のニーズが多様化し、変化の大きい現代の市場環境においては顕著です。需要予測精度を高めるためのAIやデータ分析の活用、変動に強い生産計画のしくみづくりが求められます。

サプライヤーへの負担増加

ジャストインタイムの導入には、自社だけでなくサプライヤーや物流業者など、サプライチェーン全体の協力が不可欠です。特に中小企業には体制構築や投資負担が重くなる傾向があります。さらに、情報システム整備や従業員教育など、維持にも継続的なリソースが必要です。

加えて、物流2024年問題によるドライバー不足や労働時間制限は、多頻度配送を前提とするJITに影響し、輸送コスト増や遅延リスクを高めています。

これらの対応策としては、デジタル技術を活用した情報共有や物流効率化、そして戦略的な安全在庫の確保などがあげられます。

JITは在庫削減だけでなく、サプライチェーン全体の最適化を目指すしくみです。導入時は負担増加のリスクを認識し、協働と柔軟な運用を前提にしたしくみづくりが成功の鍵となります。

ジャストインタイムに関するよくある質問(FAQ)

Q. ジャストインタイムは「時代遅れ」ですか?

A. 思想自体は今も有効ですが、運用方法には柔軟な対応が求められます。物流問題や災害リスク、地政学的リスクの高まりにより、「柔軟なJIT」への進化が求められています。デジタル技術を活用し、戦略的な安全在庫を持ちながら効率性を追求する「ハイブリッド型」が現代の主流となりつつあります。

Q. 「かんばん方式」との違いは何ですか?

A. JITは「必要なもの・必要な時・必要なだけ」という生産システム全体の思想・理念であり、かんばん方式はそれを実現するための具体的な手法です。かんばんは生産指示や部品引き取りの情報を伝達するカードシステムであり、JITを現場で実践するための手段の一つです。

Q. JITの欠点は何ですか?

A. 災害や国際問題による供給リスク、サプライヤー負担、急な需要変動への対応力低下などの弱点があります。対応策としては、安全在庫の確保や柔軟な生産体制の構築、デジタル技術による情報共有などがあげられます。

まとめ

ジャストインタイムは、「必要なもの・必要な時・必要なだけ」という理念に基づき、ムダを排除して生産効率を最大化する生産方式の思想です。トヨタ生産方式の中核として発展し、製造業に大きな革新をもたらしました。

しかし、現代では災害や地政学リスク、物流問題など、外部環境の変化による脆弱性も抱えています。また、急な需要変動やサプライヤーへの負担増加も課題です。

こういったことから、デジタル技術の活用や物流効率化、戦略的な安全在庫の確保など、JITの運用は進化が求められます。

導入を検討する際は、サプライチェーン全体の協働と、リスクを踏まえた柔軟なしくみづくりが成功の鍵となるでしょう。

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