
監修者
山本 昭則
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車のプレスにて39年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。改善活動には時に大変な場面もあります。それを乗り越える笑顔、会話を特に大事にしています。休日は趣味の山小屋づくりで精神統一をし、日々の仕事の英気を養っています。
「人時生産性を上げてほしい」と経営層から求められても、「そもそも何を指標に、どの数字を見ればよいのか分からない」製造現場では、こうした声を耳にする機会が少なくありません。
人手不足の深刻化や賃上げ圧力が高まる中、限られた労働時間でいかに粗利益を確保するかは、製造業にとって避けて通れないテーマです。感覚や経験だけに頼った改善ではなく、共通言語となる指標を持つことが、現場改善を前に進める第一歩になります。
本記事では、人時生産性の定義と計算式、製造業で参考にされることの多い目安、そして数値を低下させる要因と具体的な改善施策を解説します。「労働生産性」や「人時売上高」との違いも整理しているため、自社の現状を正しく把握し、次の一手を打つための指標として活用できます。
人時生産性とは、従業員1人が1時間の労働で生み出した粗利益を示す指標です。製造業を中心に、近年あらためて注目されています。
粗利益とは、売上高から売上原価(材料費・外注費など)を差し引いた金額を指します。つまり、人時生産性は「投入した労働時間に対して、どれだけ付加価値を創出できたか」を測る物差しといえます。
人手不足や働き方改革の流れを受け、日本の製造業では限られた人員と時間で利益を確保する必要性が高まっています。現在では経営層だけでなく、現場の管理監督者にとっても把握しておきたい基本指標の一つです。
人時生産性の計算式は次のとおりです。
人時生産性 = 粗利益 ÷ 総労働時間
総労働時間には、正社員だけでなくパートや派遣社員など、実際に現場作業に関わるすべての労働時間を含めます。特定の雇用形態だけを対象にすると、実態と乖離した数値になるため注意が必要です。
たとえば、月間粗利益が500万円、正社員5名×160時間+パート3名×80時間=合計1,040時間であれば、人時生産性は約4,808円と算出されます。
人時生産性と混同しやすい指標に「人時売上高」と「労働生産性」があります。違いを整理しておきましょう。
人時売上高は、粗利益ではなく売上高を総労働時間で割った数値です。売上高には原価が含まれるため、利益を正確に把握する目的には向きません。材料費の変動が大きい製造業では、利益の実態を捉えにくい側面があります。
労働生産性は、付加価値額を従業員数で割った指標で、1人あたりの年間付加価値を見る際に用いられます。中長期的な経営分析には適していますが、日々の作業改善やシフト調整といった現場レベルの変化は把握しにくい点があります。
日常の改善活動の成果を確認したい場合には、人時生産性が適しています。
人時生産性が低迷する背景には、多くの場合、現場に潜む「ムダ」が存在します。ここでは代表的な3つの要因を整理します。
製造現場で最も顕在化しやすいのが時間のムダです。具体的には次のような状況が該当します。
こうした時間のロスは、総労働時間を実質的に増やし、人時生産性を押し下げる要因となります。
粗利益そのものを減らしてしまうのが、利益のムダです。
利益のムダは計算式の分子に直接影響するため、数値への影響が大きくなります。
見えにくいものの、長期的に影響するのが構造のムダです。
構造のムダは放置すると慢性化しやすく、人時生産性の改善を難しくします。
段取り替えの時間短縮は、設備稼働率を高める基本的な改善です。
段取り作業を
に分解し、外段取り化や標準化を進めることで、安定した作業時間を実現します。
詳細については下記記事でも解説しています。参考にしてください。
段取り改善で設備を使い切る!5つの改善ステップを解説
多能工化は、単に作業者のスキルを増やすことが目的ではありません。工程間の手待ちや応援待ちを減らし、実質的な労働時間のムダを減らすことが、人時生産性向上の狙いです。
トヨタの現場でも、「誰がいないと止まるライン」を減らすことが、人時生産性を安定させる重要なポイントとされてきました。
詳細については下記記事でも解説しています。参考にしてください。
「平準化」と「多能工化」で現場をラクにする!仕事の幅の広げ方とリーダーシップ発揮のコツ
レイアウトの見直しや動線改善によって削減される「歩行・運搬の時間」も、すべて総労働時間に含まれます。
1人あたり数分の削減でも、ライン全体・月単位で見ると、人時生産性に与える影響は決して小さくありません。
実際の現場では、工具や材料の置き場を見直すだけで、作業者の動きが大きく変わるケースも多く見られます。
労働時間の削減だけでなく、粗利益を増やす視点も欠かせません。不良率低減や製品構成の見直しは、同じ時間でも成果を高めることにつながります。
付加価値向上は経営戦略とも連動するため、現場改善と並行して取り組むことで相乗効果が期待できます。
人時生産性は、継続的に追いかけてこそ意味があります。勤怠管理や生産管理システムと連携し、日次・週次で確認できるしくみを整えると、改善のスピードが上がります。
ツールを選ぶ際は、既存の基幹システムとの連携性、現場での入力負荷、導入コストと運用コストのバランスを確認しましょう。クラウド型のサービスであれば初期投資を抑えつつ、データ分析機能を活用できる選択肢も増えています。
人時生産性は、「粗利益 ÷ 総労働時間」で算出される、現場改善に直結する指標です。時間・利益・構造のムダを見直し、段取り改善や多能工化などを組み合わせることで、着実な向上が期待できます。
数値を把握することが目的ではありません。改善につなげるための共通言語として、人時生産性を活用することが重要です。
まずは自社の現状を計算し、どこにボトルネックがあるかを把握するところから始めてみてください。


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