

監修者
丸山 浩幸
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。大阪府出身、トヨタ自動車の品質管理にて41年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。お客様の現場では「この改善、よかったで!」ともう一声の思いやりを大事に、仲間意識が高まるような改善活動ができるよう日々伴走しています。
危険物や重量物を扱う製造現場では、重大災害の発生リスクを常に念頭に置く必要があります。トヨタでは死亡や重篤な事故につながる災害を防ぐため、「STOP6活動」を徹底し、作業者一人ひとりの安全確保に取り組んでいます。
動力・重量物・車両・高所・電気・高熱物は「6つの危険源」と呼ばれ、適切に管理しなければ作業者の安全を脅かすおそれが高い対象です。しかし、危険源を知っているだけでは重大災害は防げません。なぜSTOP6活動が重要なのかを理解し、現場全体で教育・推進していくことで、安全な職場が実現します。
本記事ではSTOP6活動の概要や6つの危険源の詳細と具体的な対策例に加え、STOP6活動の重要性と効果的な教育・推進方法について解説します。重大災害の未然防止と安全な職場づくりを目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
STOP6活動とは、製造現場で発生しやすい重大災害の原因となる6つの危険源を特定し、それぞれに対して適切な対策を講じることで、死亡や重篤な傷害をともなう事故を未然に防ぐ安全管理の枠組みです。トヨタで体系化され、現在では多くの製造業で安全管理の基本として広く採用されています。
製造現場ではさまざまな危険が存在するため、すべてに均等に対策するのは現実的ではありません。STOP6活動では、過去の災害事例やリスク特性を踏まえ、重大性の高い危険源を6つに絞り込み、優先度に基づく管理を進めます。これにより、限られたリソースで安全効果を高めることが可能になります。
管理監督者は、さまざまな設備や材料を扱う日常業務において、常に「この作業にSTOP6の危険源が潜んでいないか」という視点を持つことが求められます。危険源を発見したら、設備的な対策(ハード面)と作業手順やルールの整備(ソフト面)の両面からアプローチし、作業者が安全に作業できる環境を整えましょう。
STOP6に分類される「6つの危険源」は、以下のとおりです。
頭文字のABCDEFで覚えると、現場で危険源を確認する際のチェック漏れに役立ちます。これら6つの危険源は、いずれも適切に管理しなければ死亡や重篤な障害につながる可能性があります。日常業務に慣れていても、常に「この作業に危険な箇所はないか」と点検し続ける姿勢が重要です。
動力は、モーター、シリンダ、プレス機、ロボットアームなど、機械的な力を発生させる機器全般が該当します。想定される災害は、動力機器への挟まれ、巻き込まれ、切断などです。
生産に不可欠な設備である一方、加工に十分な力を持つため、人体が挟まれたり巻き込まれたりすれば致命的な傷害に至るおそれがあります。代表的な事故発生ケースは、清掃・点検・調整など非定常作業における安全装置の一時解除、または手順逸脱によるものです。可能部への接触を防ぐ基本動作の徹底が欠かせません。
重量物は、クレーンで吊り上げるあらゆる物体、金型、ダイス、大型部品、台車に載せた重量物などが該当します。想定される災害は、重量物の落下・転倒による打撲・骨折・圧迫などです。
代表的な事故発生ケースは、ワイヤーロープの劣化や破断、玉掛け作業の不備、吊り荷のバランス崩れなどによる巻き込まれです。周辺の立ち入り管理を基本に、人との挙動を分離することが重要です。
車両には、フォークリフト、構内運搬車、トラック、牽引車などが該当します。想定される災害は、接触・干渉、積載物の落下による打撲などです。
特にフォークリフトは小回りが利き、狭い場所でも走行できるため、作業者との接触リスクが高まります。代表的な事故発生ケースは、歩行者の不意な進入、バック走行時の死角での接触、急ブレーキ・急旋回による荷崩れによる巻き込まれなどです。歩車分離を基本に、走行領域と人の作業領域を物理的に区分する対策が求められます。
高所は、高い作業場所にある開口部、昇降設備(はしご・階段)、建築現場の足場、屋根上、タンク上部などが該当します。想定される災害は、墜落・転落による打撲・骨折・死亡などです。
代表的な事故発生ケースは、手すり損傷、足場の不安定、突風・体調不良によるバランス喪失、計画外の昇降などです。墜落制止用器具の適切な使用を前提に、計画的な昇降・作業を徹底します。
電気は、制御盤、配電盤、溶接機、電気コード、変圧器など、電気を扱う設備や機器が該当します。想定される災害は、感電による心停止・熱傷・筋肉損傷などです。
電気は目に見えないため、危険を直感的に察知しにくい特性があります。代表的な事故発生ケースは、漏電設備への接触、仮設配線の放置、高圧機器の取り扱い時の遮断・検電不足などです。専門知識の習得と作業前の電源遮断・無電圧確認を基本に、適切な保護具の使用を徹底しましょう。
高熱物は、溶融金属、高温の蒸気・油、加熱炉、溶接作業、可燃性物質などが該当します。想定される災害は、熱傷、爆発・火災による広範囲の被害などです。
代表的な事故発生ケースは直接的な接触ですが、鋳造や熱処理工程など日常的に高温物質を扱う現場では慣れから注意が散漫になることがあります。また、近くの可燃性ガス・引火性液体の存在、換気不足にも挙げられます。高熱要保護具の適切な着用と可燃物管理の徹底が求められます。
STOP6による事故を防ぐための代表的な対策例を紹介します。
危険源ごとに適切な対策を組み合わせることで、重大事故の可能性を大きく低減できます。
動力に対する設備対策は、可動部への接触を遮るガード・カバー・柵の設置や、非常停止ボタンのアクセス性を高めておくことが重要です。
運用面では、設備内に立ち入る前には確実な停止確認を行うことが基本です。誤起動や第三者の起動による事故を防ぐため、ロックアウトの運用や作業表示・鍵管理の徹底なども有効です。また、非定常作業時などに「短時間だから」と手順を省略するケースもあるため、指差呼称とチェックリスト運用で抑止し、監督者の立会いを要する場面を明確化しておきましょう。
重量物の設備対策は、吊り上げ・移動の経路への立ち入り管理を徹底します。吊り治具は使用前点検と定期点検を怠らないようにしましょう。
運用面では、吊り上げ・移動中の近接禁止を守り、保管・移動は可能な限り低い位置で行うことで万一落下してしまった時の被害を抑えます。また、固定具の点検は目視だけに頼らず、点検表による項目確認を徹底し、判断の一貫性を高めてください。
車両の設備対策は、歩車分離の導線設計です。人の作業領域と走行領域を物理的に区分し、接触による事故を防ぎます。フォークリフトなどの後方視界はミラーやカメラ、警報で補助することで、死角に入るリスクを低減できます。
運用面では、指定経路の遵守、速度管理、一時停止・指差呼称を運転時のルールとして定着させます。また、シートベルトやヘルメットなど保護具の着用を必須化しましょう。
高所の設備対策は、墜落防止の対策を確実に行うことです。開口部には手すりや囲いなどを設置し、位置と強度を適正に管理します。昇降設備は強度・固定を確認したうえで使用し、仮設的な足場には十分な安全措置を講じます。
運用面では、安全帯(墜落制止用器具)の適切な使用を徹底します。初めての作業者には基礎教育と実地訓練を実施し、正しい使い方を身につけさせることが大切です。また、計画外の作業で事故につながるケースも多いため、事前許可制やチェック強化などのルール構築が必要です。
電気の設備対策は、漏電遮断器や絶縁マットの整備、高圧区画の標識掲示や施錠管理による不用意な接近防止です。仮設配電は管理ラックで整理するなど、放置されないよう注意しましょう。
運用面では、電源遮断→検電器で無電圧確認→施錠標識→作業の手順を標準化し、絶縁用保護具の着用を義務づけします。配線・機器の劣化、コネクタの緩みや損傷などは定期的に点検し、保守記録を追跡できるようにしましょう。
高熱物の設備対策は、遮へいや断熱による接触防止、可燃物の区画・温度管理、換気・排気能力の十分な確保です。
運用面では、高熱用保護具の適合性を確認するとともに、着火前の換気と漏えい確認を必ず行い、火気や静電気などの点火源管理を徹底します。消火設備は適切な種類を配置し、いざという時のアクセスを周知しておくことも大切です。また、可燃物の残置による事故を防ぐため、作業開始前の点検で可燃物の除去をチェック項目として明示しておきましょう。
STOP6は重大災害につながりやすい代表的な危険源を6つに絞り込んだものですが、現場の特性によっては、それ以外にも注意すべき危険源が数多く存在します。自社の現場特性に合わせて危険源を洗い出し、優先順位をつけて対策することが重要です。
有機溶剤、酸・アルカリ、特定化学物質などは、皮膚への接触や蒸気の吸入によって、急性中毒や慢性的な健康障害を引き起こす可能性があります。特に有機溶剤は揮発性が高く、換気が不十分な環境では濃度が上がりやすく、めまいや意識障害のリスクがあります。
対策は保護具の着用、局所排気の活用が基本です。先ずは、SDS(安全データシート)を確認し、取り扱う物質の危険性を正しく理解することが大切です。
非破壊検査や医療機器製造などの特定工程では放射線を扱います。放射線は目に見えず、知らないうちに許容量を超えて被曝してしまう危険があります。
放射線作業に従事する際は、遮蔽・距離・時間の原則に基づく管理と線量の記録・監視を徹底することが必要です。
レーザー加工機やレーザー測定器の光はエネルギー密度が高く、直接目に入ったり反射光であっても網膜損傷の危険があります。
専用保護メガネの着用、レーザー光路への侵入防止、使用区域の管理を徹底します。
タンク内、ピット、マンホール、倉庫など、換気が不十分な閉鎖空間では、酸素欠乏や硫化水素中毒のリスクがあります。また、被災者を救助しようとした人が二次災害にあう危険もあります。
閉鎖空間での作業前には酸素・硫化水素濃度の測定、十分な換気の実施を徹底してください。
金属粉、木粉、穀物粉など、細かい粉塵が浮遊する環境では、吸入による呼吸器障害(じん肺等)のリスクを高めます。さらに、可燃性の粉塵は、一定濃度以上になると粉塵爆発を起こす危険があります。
粉塵が発生する作業場では、集塵装置の設置と防塵マスクの着用、清掃による粉塵の堆積防止を行いましょう。
プレス機やコンプレッサーなど、大きな音を発する設備の近くで長時間作業を続けると、騒音性難聴のリスクが高まります。
騒音環境で作業する際は、耳栓やイヤーマフなどの聴覚保護具の着用が望ましいでしょう。また、騒音下でのコミュニケーション手段の確保により、警告の聞き漏らしによる二次災害を防ぐことも重要です。
高温環境での作業は熱中症のリスクが高まります。特に夏場の屋外作業や、炉の近くでの作業は注意が必要です。一方、冷凍庫内など極端な低温環境では、凍傷や低体温症の危険があります。
温度環境による健康障害を防ぐためには、適切な休憩の確保、水分・塩分の補給、作業時間の管理、適切な防護服の着用などの対策が求められます。
製造現場では安全管理は最優先事項であり、STOP6活動はその中核を担う取り組みです。重大災害は一度発生すると、被災者本人の身体的・精神的なダメージに加え、家族や職場、企業活動にも深刻な影響を及ぼします。
STOP6活動の重要性は、単なる事故防止だけではなく安全文化の醸成と持続可能な事業運営の基盤づくりにあります。6つの危険源を体系的に管理することで、現場の作業者は「どこに危険が潜んでいるか」を常に意識できるようになり、危険予知能力が向上します。
また、STOP6活動を徹底している現場では、作業者同士が互いの安全を気遣い、声をかけ合う風土が自然と生まれます。「自分の身は自分で守る」という意識に加え、「仲間の安全も守る」という相互扶助の精神が組織全体の安全レベルを底上げします。
重大災害の多くは「慣れ」や「油断」から発生します。毎日同じ作業を繰り返していると、危険に対する感度が鈍り、「いつも大丈夫だから今日も大丈夫」という感覚になりがちです。STOP6活動の継続的な実施を通じて、この危険な慣れを防ぎ、常に緊張感を持って作業に臨む姿勢を維持できます。
企業経営の観点からも、重大災害は人的被害だけでなく、操業停止による損失、損害賠償、企業イメージの低下など、大きなコストを伴います。事前に危険源を管理し、災害を未然に防ぐことは、最も効果的なリスクマネジメントといえます。
STOP6活動を現場に定着させるためには、体系的な教育と継続的な推進活動が不可欠です。知識として理解するだけでなく、一人ひとりが危険を自分ごととしてとらえ、日々の行動に反映できる状態を目標とします。
教育の第一歩は、STOP6の6つの危険源を正しく理解させることです。新入社員や配置転換者に対しては、座学で危険源の種類と特性を学んだ後、実際の現場を歩きながら「ここにはどのような危険があるか」を確認させます。机上の知識と現場の実態を結びつけることで、理解が深まります。
教育で重要なのは、過去の災害事例の共有です。自社や同業他社で発生した事故の原因と経緯を具体的に説明し、「もし自分がその場にいたら」と想像させることで、危険を身近なものとして認識させます。映像資料や写真を活用すると、危険の実感が高まります。
定期的な訓練も欠かせません。非常停止装置の操作、保護具の正しい着用方法、避難経路の確認など、実践的な訓練を繰り返すことで、緊急時にも冷静に対応できる力が身につきます。訓練は形式化しないよう、目的・評価・改善までを含めた運用が重要です。
管理監督者の役割は特に重要です。管理監督者自身がSTOP6活動の模範を示し、日常的に部下の安全行動を観察・指導することで、活動の形骸化を防げます。安全に関する声かけや褒める行為を積極的におこない、安全を意識した行動が評価される職場風土を醸成しましょう。
ヒヤリハット活動との連携も効果的です。「危なかった」「ひやっとした」という経験を共有し、STOP6の視点で分析し、潜在的な危険を早期に発見します。報告しやすい環境をつくり、情報が集まるしくみを整えることが推進のポイントです。
推進にあたっては、安全パトロールや安全大会など定期的なイベントの開催も有効です。日常業務の中でSTOP6を意識する機会(朝礼・短時間教育・現場巡回)を組み込み、継続的に注意喚起をおこなうことで、安全意識を高いレベルで維持できます。
重大災害を防ぐ「STOP6活動」は、6つの危険源を体系的に管理し、安全な職場環境をつくるための基本的な取り組みです。
動力・重量物・車両・高所・電気・高熱物の「6つの危険源」は、適切に対策しなければ死亡や重大な事故につながるおそれがあります。それぞれの危険源に対して、物理的な防護と運用手順を整えるとともに、作業者一人ひとりが危険を正しく認識し、安全行動を習慣化することが求められます。
STOP6活動を効果的に推進するためには、体系的な教育と継続的な取り組みが不可欠です。過去の災害事例を共有、定期的な訓練の実施、危険予知能力の向上に取り組みましょう。さらに、管理監督者が率先して模範を示し、安全を意識した行動が評価される職場風土を育てることが、定着への鍵となります。
「いつも安全に作業できているから大丈夫」という慣れや油断が、重大災害を招く要因になります。STOP6の視点で現場を見直し、危険な箇所がないか継続的に点検することで、作業者全員が安心して働ける職場を実現しましょう。
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