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2026.01.29

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TPM活動とは?8本柱・16大ロス・自主保全7ステップまで徹底解説

TPM活動とは?8本柱・16大ロス・自主保全7ステップまで徹底解説

安田 幸治

監修者

安田 幸治

OJTソリューションズで、 お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて42年間の現場経験、管理職の経験を経てOJTソリューションズに入社しました。モットーは「仲間に感謝」。時に愛犬に癒されながら、日々お客様の現場で感謝・改善・努力の毎日を過ごしています。

TPM(Total Productive Maintenance)は、「全員参加の生産保全」を軸とする改善手法です。設備故障、不良、災害など製造現場のあらゆるロスをゼロにすることを目指し、生産性向上と企業の収益力を高める狙いがあります。

本記事では、TPM活動の定義や目的から、活動を支える8本柱と16大ロスの考え方、さらに導入から定着までの具体的な進め方を解説します。自社でTPM活動を始める方、あるいは既存の活動を見直したい方は、参考にしてみてください。

TPM活動の定義と目的

TPMは「Total Productive Maintenance」の略称で、日本語では「全員参加の生産保全」と訳されます。1971年に公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)によって提唱され、日本電装株式会社(現・デンソー)での実践から国内外へ広がりました。

原点は、1950年代にアメリカから導入されたPM(Preventive Maintenance:予防保全)にあります。PMでは「設備で作業する人」と「保全を担当する人」に分かれていましたが、日本の製造現場では、作業者自身が設備を日常的に守る「自主保全」の考え方が発展し、全員参加型の活動へと成長しました。

TPM活動の目的は、大きく3つに整理できます。

1.設備効率の最大化:故障やチョコ停(短時間の停止)など、生産工程に潜むあらゆるムダを削減し、設備の稼働率を高めます。

2.利益の最大化:ムダの低減によるコスト改善や品質安定による顧客満足向上を通じ、企業収益に貢献します。

3.人づくり:現場の作業者が設備について理解し、自ら問題を発見・解決できる人材へと成長することで、組織全体の底上げを図ります。

TPM活動を支える「8本柱」と「16大ロス」

TPM活動を効果的に推進するには、活動の骨格となる「8本柱」と、削減すべき「16大ロス」を正しく理解することが重要です。この2つの概念は、生産活動の改善点を明確にするための羅針盤となります。

TPM活動の8本柱

TPM活動では、生産に関わるすべての部門が職域を越えてチームを組み、ロスの排除と予防に取り組みます。この小集団活動を「柱(Pillar)」と呼び、一般的には8本の柱で構成されます。

1. 個別改善

生産ラインや設備ごとに発生しているロスを特定し、継続的に排除していく活動です。特定の設備で頻発するトラブルの根本原因の分析や、作業フローの見直しによる不要な手順の削減を通じて、生産システム全体の効率化を図ります。

2. 自主保全

現場のオペレーターが自ら設備の点検や簡易的なメンテナンスを行う取り組みです。「自分たちの設備は自分たちで守る」という意識を醸成し、日常的な清掃や給油、増し締めなどを通じて、異常の早期発見と大きな故障の未然防止につなげます。TPM活動のなかで基礎となる柱とされています。

3. 計画保全

保全部門が主体となり、あらかじめ計画を立てて設備のメンテナンスを実施する活動です。定期点検や部品交換の時期を設定し、突発的な故障を減らすことで設備の稼働率を向上させます。近年はAI技術を活用した予知保全も取り入れられ、最適なタイミングでの保全が可能になりました。

4. 品質保全

不良品をつくらない設備・工程の条件を整備し、品質を維持・向上させるための活動です。品質に影響を与える設備の状態を管理し、不良の発生原因を追究して再発を防止します。

5. 教育・訓練

TPM活動を支える人材を計画的に育成する活動です。座学による知識習得、実機を使った実践的なトレーニング、e-ラーニングによる自己学習など、多様な方法で従業員の能力開発を進めます。

6. 安全・衛生・環境

災害ゼロ、公害ゼロを目指し、安全で健康的な職場環境を整備する活動です。リスクアセスメントの実施や作業環境の改善を通じて、従業員の安全を確保します。

7. 設備初期管理

新しい設備の導入時に、保全性・操作性を考慮した設計・立ち上げを行う活動です。過去の故障情報やノウハウを設計にフィードバックすることで、信頼性の高い設備づくりを目指します。

8. 管理・間接部門の保全

生産部門を支援する管理部門や間接部門においても、業務のムダを排除し効率化を図る活動です。事務作業の標準化や情報システムの改善などを通じて、生産活動を間接的にサポートします。

これら8本の柱は、企業によって呼び方や構成が異なる場合もありますが、いずれも「ロスをゼロにする」という共通の目標に向かって展開されます。

生産効率を阻害する16大ロス

TPMでは、設備や工程が理想的に稼働している状態と現在の状態との差を「ロス」と定義します。このロスは大きく3つのカテゴリ・16種類に整理されています。

設備の効率化を阻害する8大ロス

  • 故障ロス:設備の故障によって発生する停止時間や不良品のロス
  • 段取り・調整ロス:品種切替や段取り替えにともなう停止や調整時間のロス
  • 刃具交換ロス:刃具やツールの交換作業に要する時間のロス
  • 立上りロス:設備の起動から安定稼働までに発生するロス
  • チョコ停・空転ロス:短時間の停止や空転による累積的なロス
  • 速度低下ロス:設備の設計速度と実際の運転速度との差によるロス
  • 不良・手直しロス:不良品の発生や手直し作業にともなうロス
  • シャットダウンロス:計画的な停止(定期修理など)にともなうロス

人の効率化を阻害する5大ロス

  • 管理ロス:指示待ちや材料待ちなど管理上の問題によるロス
  • 動作ロス:作業者の不要な動作や非効率な作業方法によるロス
  • 編成ロス:ライン編成のアンバランスによるロス
  • 自動化置換ロス:自動化で代替可能な作業を人手で行うことによるロス
  • 測定・調整ロス:頻繁な品質確認や調整作業によるロス

原単位の効率化を阻害する3大ロス

  • 歩留りロス:原材料から製品への変換効率の低下によるロス
  • エネルギーロス:電力やガスなどのエネルギーの無駄遣いによるロス
  • 型・治工具ロス:型や治工具の消耗・破損によるロス

TPM活動では、これら16大ロスのうち自社の現場に潜むロスを洗い出し、一つひとつ削減していくことで、生産効率の向上と企業利益の拡大を目指します。

TPM活動の進め方|導入から定着までのステップ

TPM活動を成功させるには、段階的に取り組むことが重要です。JIPMが推奨する標準モデルでは、導入準備から定着までの活動を12ステップに整理しています。

導入準備~開始

活動を開始するための体制づくりと方針づくりが行われます。

①経営トップの意思表明:経営トップがTPM推進の意思を示し、全社の方向性を共有します。

②TPM教育・社内キャンペーン:管理職や推進担当者を中心に基本教育を行い、社内全体へ活動を周知します。

③推進組織の確立:推進本部・部会など、活動を支える組織体制を整備します。

④方針・目標の設定:中期方針や数値目標など、活動の方向性を明確にします。

⑤マスタープランの策定:8本柱の計画・スケジュール・体制を整理し、全体計画を描きます。

実施・定着

現場に根づいた改善活動を進め、TPMを組織文化として定着させます。

⑥TPM活動キックオフ:全員参加で活動開始を宣言し、意識統一を図ります。

⑦生産効率化の体質づくり:個別改善、自主保全、計画保全などの重点活動を進めます。

⑧設備初期管理の確立:新設備・新製品の立ち上げ段階からロスを予防します。

⑨品質保全体制の整備:重要品質条件の管理・維持のしくみを構築します。

⑩間接部門の強化:事務作業や情報管理のムダ取りを進めます。

⑪安全・環境管理の確立:災害ゼロ・環境負荷低減に向けた管理体制を整えます。

⑫TPM完全実施:継続改善によって組織全体のレベルアップを図ります。

このようにTPM全体は12ステップで構成されますが、現場の改善力を高め、ロスゼロ体質をつくる中心となるのが「自主保全」です。次からは、自主保全を推進する7つのステップについて詳しく解説します。

現場の要「自主保全」

8本柱のなかでも特に重要とされる自主保全は、設備の基本条件づくりと現場力育成を同時に実現するTPMの中心的活動であり、7つのステップに沿って段階的に進めます。

第1ステップ:初期清掃

設備の徹底的な清掃を行いながら、不具合を発見する活動です。清掃を通じて設備に触れることで、異常を見つける目を養います。配線の緩み・オイル漏れ・ボルトの緩みなど、現場で見落とされがちな初期異常を把握する重要な段階です。

第2ステップ:発生源・困難箇所対策

汚れや異物の発生源を特定し、根本的な対策を講じます。また、清掃・点検がしにくい箇所を改善し、日常の保全作業を効率化します。この段階では「なぜ汚れるのか」「なぜ点検しづらいのか」という“原因に踏み込む改善視点”が求められます。

第3ステップ:自主保全仮基準の作成

清掃、給油、点検の項目と頻度を定めた仮基準書を作成します。設備の構造や機能を学習し、「あるべき姿」を理解した上で基準を設定します。仮基準づくりは、作業者が設備の“正常条件”を理解する教育プロセスでもあり、異常発見力の底上げにつながります。

第4ステップ:総点検

設備を隅々まで点検し、これまで気付かなかった欠陥を摘出します。点検項目の洗い出しとともに、点検技能の教育も並行して実施します。配管・電気系統・潤滑系・駆動系など、設備全体を視える化して把握することが総点検の狙いです。

第5ステップ:自主点検

自主保全の仮基準を本基準に移行し、オペレーター自身が確実に点検を実施できる体制を整えます。

第6ステップ:標準化

自主保全活動の標準化を進め、誰が担当しても同じレベルの保全ができる状態を目指します。保全記録の保存と解析による継続的な改善も行います。点検手順書・写真付きチェックシート・動画マニュアルなどを整備することで、ばらつきを抑え、再現性の高い保全を実現します。

第7ステップ:自主管理

自主保全活動を日常業務として定着させ、オペレーターが自律的に設備を管理できる状態を実現します。企業方針や目標に則った改善活動への展開も図ります。この段階に到達すると、現場が“異常に強いライン”へ変わり、予防保全・品質安定・安全水準の向上にも直結します。

TPM活動が「時代にそぐわない」と見なされるのはなぜか?

製造現場では「TPMは時代遅れだ」という声を耳にすることがあります。長年にわたって成果を上げてきた手法でありながら、なぜこうした評価を受けるのでしょうか。その背景を理解することが、活動を見直す第一歩となります。

現場が疲弊する「マンネリ化」と「負担感」

TPM活動が敬遠される背景の一つに挙げられるのが、現場の負担感です。「毎日の清掃活動が形骸化している」「業務時間外にTPM活動を求められる」「活動報告の書類作成に時間を取られる」こうした不満は多くの現場で共通しています。

特に自主保全活動において、「清掃ばかりさせられている」という声は根強くあります。本来、清掃は設備の異常を発見するための活動ですが、その意図が十分に共有されていない場合、単なる雑用としてとらえられてしまいます。

また、活動開始から年月が経つと、改善のネタが枯渇してマンネリ化が起こりやすくなります。「やらされ感」が強まると、活動への参加意欲が低下し、形式的な取り組みに陥るケースも少なくありません。この状態になると、活動本来の目的や価値が見えづらくなり、「続ける意味が分からない」という声が生まれやすくなります。

精神論だけでは通用しない現代の課題

製造業を取り巻く環境は、TPMが提唱された1970年代から大きく変化しています。特に現在の現場は、当時とは比べものにならないほど複雑化・高度化しています。

人手不足と業務量増加
人手不足の深刻化により、一人あたりの業務量が増加し、TPM活動に割ける時間が限られています。従来のように多くの人員を投入した人海戦術的なアプローチは、現実的に難しくなっています。

設備の高度化・複雑化
設備の高度化も課題です。最新の生産設備は電子制御やソフトウェアが複雑に絡み合っており、従来の「五感による点検」だけでは異常を検知しにくくなっています。また、デジタル技術の普及により、必要とされる知識・技能も大きく変わりました。

QCD要求の高度化
さらに、グローバル競争の激化により、品質・コスト・納期のすべてにおいて高いレベルが求められるようになりました。「故障したら直す」のではなく、「故障を予測して未然に防ぐ」という、より高度な保全が必要とされています。この変化に合わせて、保全の在り方も「対処」から「予防」、さらに「予兆検知」へと進化しています。

これらの課題に対し、精神論や従来のやり方だけでは、現場の納得や共感を得にくくなっています。TPM活動の本質を見失わず、現代の環境に適合した進め方を模索することが求められています。つまり、「TPMそのものが古い」のではなく、”現場に合った形に進化させられていない” ことが課題の本質といえます。

DXで進化する「次世代TPM」のアプローチ

「時代遅れ」という批判に対する解決策として注目されているのが、デジタル技術を活用した次世代型のTPM活動です。TPMの基本理念は維持しながら、テクノロジーの力で現場の負担を軽減し、活動の精度を高めるアプローチが広がっています。

IoTとデータ活用による「予兆保全」

従来のTPMでは、作業者が五感を使って設備の異常を発見することが重視されてきました。「異音がする」「振動が大きくなった」「発熱している」といった変化を人の感覚でとらえ、故障を未然に防ぐ考え方です。

現在では、IoTセンサーを設備に取り付けることで、温度、振動、電流値などのデータをリアルタイムで収集できるようになりました。蓄積されたデータをAIで分析することで、故障の予兆を検知し、最適なタイミングでの保全を実現する「予兆・予知保全」が可能になりました。

これにより、人による点検の頻度を適正化しつつ、見落としのリスクを低減できます。熟練者の勘に頼っていた異常検知を、データに基づく客観的な判断に置き換えることで、技術伝承における属人化の課題にも対応できます。

デジタルツールによる活動の視える化・効率化

TPM活動における事務負担を軽減するツールも進化しています。

タブレット端末を使った点検記録の入力は、紙の帳票を廃止し、データの即時共有を可能にします。クラウド型の設備管理システムを導入すれば、保全履歴や故障情報を一元管理でき、全員での情報共有が容易になります。

点検や保全の記録がデジタル化されることで、データの分析も簡単になります。どの設備でロスが多く発生しているか、どのような対策が効果的だったかを視える化し、改善活動の精度を高めることができます。また、紙運用では埋もれがちだった保全情報が蓄積され、改善テーマの発掘にも役立ちます。

動画マニュアルや現場帳票システムの活用も広がっています。熟練者の作業を動画で記録し、教育訓練に活用することで、技能伝承の効率化を図る企業も増えています。特に属人化しがちな調整作業や点検ポイントの共有に効果的です。

デジタル技術の活用は、TPM活動を「やらされるもの」から「データで成果が視えるもの」へと変えていく力を持っています。現場の負担を減らしながら、活動の効果を高めることが、次世代TPMの目指す姿です。つまり、デジタルはTPMの代替ではなく、TPMの価値を引き出す“拡張ツール”として機能します。

まとめ

TPM活動は全員参加でロスをゼロに近づけることを目指し、8本柱の活動を通じて設備の効率化と人材育成を同時に実現します。

活動を成功させるためのポイントを整理すると、次のようになります。

  • 経営トップから現場まで、全員で目的を共有する
  • 16大ロスを参考に自社のロスを正しく把握し、データに基づいた改善策を立てる
  • 自主保全を7ステップで段階的に進め、作業者の意識と能力を高める
  • 改善だけでなく、予防保全や未然防止のしくみを構築する
  • デジタル技術を活用し、活動の負担軽減と効果の視える化を図る

これらの取り組みを効果的に組み合わせることで、設備の安定稼働と現場力の強化が相乗的に進みます。

「TPMは時代にそぐわない」という声があるのは事実ですが、その多くは、活動の目的や意図が現場に十分伝わらず、本質が形骸化してしまったり、現代の環境変化に応じた進め方に更新されていないことが背景にあります。

IoTやAIといったデジタル技術と組み合わせることで、TPM活動は現代の製造現場にも十分に適用可能です。今一度、自社の状況を確認し、現状に合わせた活動にアップデートしながら改善を積み重ねていくことが、競争力強化への道筋となるでしょう。「TPM×デジタル」による次世代型の活動こそが、これからの現場の標準となりつつあります。

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