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2025.01.31

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トヨタの危険予知訓練「4RKYT」とは?危険予知能力を高める重要性も紹介

トヨタの危険予知訓練「4RKYT」とは?危険予知能力を高める重要性も紹介

見城 吉昭

監修者

見城 吉昭

OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車の機械加工にて39年の現場経験を積み、OJTソリューションズに入社しました。趣味の読書や旅行で自分の世界を広げながら、現場で働く人の声を大事に「働く人の心のための改善」に日々取り組んでいます。

工場などの生産現場には多くの危険が潜んでいます。労災を防ぐための物的な対策はもちろん重要ですが、実際に作業をするメンバーの危険に対する感度、危険予知能力を高めることが大切です。トヨタでは危険予知訓練として「4R(ラウンド)KYT」を定期的におこなっています。

4RKYTをおこなうことで危険を危険と認識でき、自分が働く職場に危険が潜んでいないか細心の注意を払えるようになります。また、段階を踏んで訓練をおこなうことで、どのような作業や場所に危険が発生しやすいか予測する力、危険に対してどう手を打つか考える力も習得できます。

本記事では、4RKYTの概要をはじめ、取り組みのポイントや訓練をおこなった体験談もお伝えします。メンバーが安心して仕事に取り組める環境づくりを目指している方は、ぜひご覧ください。

4RKYTとは?

生産現場にはあらゆる危険が潜んでいますが、危険を危険として認識していない作業員の方も多くいます。例えば、高所作業を行っている人の真下で作業している、通路に鋭利なものが飛び出している、可燃性物質の近くで溶接作業をしている…など挙げだしたらきりがありません。現場で作業するメンバーの危険予知能力は勝手に高まるものではありません。

「ケガを経験して一人前になる」という時代はとうの昔に過ぎ去っています。会社として、従業員の安全を守るために危険予知能力を高める機会を用意するのが経営の義務と言ってもいいでしょう

「トヨタでは危険予知ができる」・「安全な作業を実践できる」・「相互に指摘できる」メンバーを「安全人間」と呼んでいます。危険予知能力は安全人間のベースとなる能力で、その能力を高めるための訓練を「4R(ラウンド)KYT」と呼んでいます。Kは危険、Yは予知、Tはトレーニングを意味し、4つのラウンドに分けて危険を危険と認識する感性や想像力を高めるための訓練です。

4RKYTの具体的な手順

4RKYTは、以下の4つのラウンドに分けてチームで訓練をおこないます。

  • 危険箇所の発見
  • もっとも危険な箇所の特定
  • 対策案を考える
  • 対策の決定

現場によって4RKYTの実践方法は異なりますが、例えば月に1回、30分ずつ4人~5人の班に分かれて業務時間内におこなっています。メンバー構成はより多くの視点から現場を見られるよう、ベテラン作業員・中堅作業員・新人作業員と経験年数をバラバラにして構成します。

そして、実践する際は4RKYTシートを使い、リーダーと書記を決めて実作業や作業の動画、写真を見ながらラウンドごとに会話形式で進めていきます。複数人の視点で現場を見ることで、自分では気付けないような危険箇所に気付けるのが大きなメリットです。それぞれのラウンドの内容を詳しく解説します。

①危険箇所の洗い出し

1ラウンド目は、危険箇所の洗い出しです。作業の写真や動画を見ながら、どのような危険が潜んでいるのか意見を出し合います。メンバー全員に自分事と思ってもらうためにも、可能な限り実際に現場でおこなう作業を対象にするのが好ましいです。また、メンバーからの発言は事実・予知を問わず、リーダーが進行役となって1人1件以上意見が出るようにしてください。

1ラウンド目の重要なポイントは、原因と結果がわかる形で意見を出すことです。例えば、「脚立から身を乗り出しているから、落下する」など結果も含めて発言し、自分や仲間が危険にさらされるかもしれないという視点を持ち、自分事に置き換えさせることが大切です。また、出てきた意見は否定せずに、思いつく限り洗い出すようにしてください。

②もっとも危険な箇所の特定

2ラウンド目は、もっとも危険な箇所の特定です。1ラウンドで出てきた危険箇所のなかからもっとも危ないと思うものを絞り込んでいきます。災害の大きさや災害頻度、直近に災害が起こっているかなどを基準にして、一番対策すべきだと思われるものを1つだけ選んでください。

ただし、基準に厳密さを求めすぎて会話が止まってしまうのは避けなければなりません。もちろん安全対策会議などでは厳密にすべきですが、あくまでも4RKYTはトレーニングの一環であるため、メンバー全員が共有できるものを1つだけ選ぶのがポイントです。「これが一番危ないため、対策したい」と全員が共通して感じるものを選ばせるようにしてください。

③対策案を考える

3ラウンド目では、2ラウンド目で絞り込んだもっとも危険な箇所の対策案を考えます。具体的かつ自分達が実践可能な対策案を思いつくだけ書き出してもらってください。このとき1ラウンド目と同じように、周りの意見を否定しないようにするのが重要です。

対策には人的対策と物的対策の2種類がありますが、できるだけ人的対策をメインに案を出してください。もちろん物的対策の案を出してはいけないわけではありませんが、今日から自分ができる対策を思いつく能力を鍛えるためには、人的対策案を考えさせるのが有効だからです。

例えば、足場に昇降機があって挟まれる危険が潜んでいる場合、例えば人的対策は「作業時に指定の立ち位置で両足を揃える」、物的対策は「安全な設備に交換する」が挙げられます。しかし、物的対策は自分ができる対策の範囲を超えてしまっていることが多いです。そのため、「4RKYTは人的対策を考える訓練」としてメンバーにとらえてもらうようにしてください。

④対策決定と唱和

4ラウンド目では、対策の決定をします。3ラウンド目で考えた対策に優先順位をつけて、実際におこなう対策を1つに絞り込みます。そして、メンバーひとりひとりに「自分はこうする」と、行動目標を決めさせます。

最後は「〇〇、ヨシ!」を標語にしてチーム全員で指差唱和をおこなってください。唱和する理由は、気持ちの面では共通認識を持つことができ、記憶の面では耳に残ることで、少なくともその日の作業中は忘れないからです。このように、指差唱和には大きな効果があるため、例えば「台車ストッパー、ヨシ!」など、決めた対策に対して指差唱和を徹底してみてください。

そして、対策を決めたらチーム全員で必ず現場で実践し、管理監督者は守っているかをチェックすることが重要です。

4RKYTをおこなった体験談と取り組みのポイント

最後に、4RKYTをおこなった実際の体験談をご紹介します。あるトレーナーは、トヨタに入社した当時は4RKYTにしぶしぶ取り組んでいたそうです。なぜなら、当時の題材は安全部署から送られてくるイラストで、自分が普段おこなっている作業との違いやイラストのわかりづらさなどを感じていたからです。そのため自分事に置き換えることができず、なかなか意欲的になれませんでした。

当時は危険予知能力が低かったと話すトレーナーですが、長く現場で働いていると小さなケガやヒヤリを経験することもあったそうです。そのため、「自分はもちろん、他のメンバーにケガをさせてはいけない」と意識が変わっていきました。

そこで、自分事に置き換えるべく、イラストではなく自分たちがおこなっている作業を題材にしたところ、積極的に参加する人が増え、あらためて日常にも危険が潜んでいることに気付くことができました。早速4RKYTを導入しようとお考えの方は、最初は20秒ほどの短い動画から始めると、気付きが得られるはずです。

まとめ

危険予知能力が欠けていると、ヒヤリとするような出来事が起こったり実際にケガをしてしまったりするなどの事故につながってしまう可能性があります。そのため、トヨタではメンバー全員の危険予知能力を高めるためのしくみとして、「4RKYT」を訓練として定期的におこなっています

  • 危険箇所の洗い出し
  • もっとも危険な箇所の特定
  • 対策案を考える
  • 対策決定と唱和

上記の4ラウンドに分けて危険や事故を未然に防ぎますが、大切なのは自分事として考え、どのような意見が出ても否定しないことです。現場の安全を徹底したいけど、何から取り組めばよいかわからないとお悩みの方は、ぜひ4RKYTを試してみてはいかがでしょうか。

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