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2024.10.31

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アンドンとは?トヨタで実践している失敗を視える化させるしくみを紹介

アンドンとは?トヨタで実践している失敗を視える化させるしくみを紹介

山本 昭則

監修者

山本 昭則

OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車のプレスにて39年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。改善活動には時に大変な場面もあります。それを乗り越える笑顔、会話を特に大事にしています。休日は趣味の山小屋づくりで精神統一をし、日々の仕事の英気を養っています。

人は、失敗すれば本能的にそれを隠そうとします。多くの職場でもよく見られる光景ですが、失敗を隠すことは問題を放置することと同じで、結果として問題が拡大してしまう恐れがあります。そこでトヨタでは失敗を視える化して問題を早期に発見・解決できるしくみをつくっています。

そのしくみのひとつが「アンドン」です。アンドンを活用することで、個人の判断に依存せずに、チーム全体で問題に対応できる体制が整い、業務効率や生産性向上にもつながります。本記事では失敗を視える化するしくみとしてのアンドンと、その具体的な導入例を紹介します。職場で起こる失敗や問題への対応に関心のある方はぜひご覧ください。

アンドンとは?

「アンドン」とは異常が発生した際に表示装置を点灯させるしくみのことです。何か異常が起こったら作業者は作業場に張ってあるひもを引くことで装置が点灯し、ラインが止まります。

通常の職場では業務効率や納期を優先するあまり、ラインを止めた作業者が責任を問われることもあります。「なぜ勝手にラインを止めたんだ」と叱責される場面も想像しやすいでしょう。

しかし、トヨタでは「アンドン」のひもを引いた作業者がラインを止めたことに対して責任追及や叱責されることはありません。むしろ早期に異常を知らせた行動に対して「よく止めた」と評価される文化が根付いています。

アンドンの3つの基本特徴

1. 即時可視化:異常が発生した瞬間に、ランプの点灯や音響で工場全体に知らせる

2. 作業者主導:現場の作業者が主体的に問題を申告できる権限を持つ

3. 停止権限:必要に応じてラインを一時停止し、不良品の流出を防ぐ

「止める、呼ぶ、待つ」の文化

トヨタでは作業当事者に「止める、呼ぶ、待つ」の文化を浸透させています。具体的には、異常が起こったらラインを止め、上司や責任者を呼び、異常内容とその時の状況や手順を確認してもらいます。事実関係の確認が終わって問題解決が済めば、ラインは再び動き出します。

もし止めずに「これくらいなら大丈夫だろう」と後工程に流してしまえば、検査で不良としてひっかかります。しかしその時にはもう手遅れです。誰がいつどのような状態で起こしたのか問題が特定できず、再発防止も困難になります。

「止める、呼ぶ、待つ」の文化の浸透と「アンドンのひもをよく引いてくれた」と評価される風土があるからこそ、現場のメンバーが失敗や異常を隠すことなく、積極的に発見・報告できるのです。隠されがちな失敗を表に出す秘訣は、当事者を責めることなく、問題の真因(真の原因)にフォーカスすることです。

失敗は改善の種であり、真因を特定できれば同じような失敗を防ぐことができます。ラインが止まったことに怒る、焦るのではなく、「今後の失敗を防げるチャンス」ととらえてみてください。

アンドンの目的と効果

先述した通り、アンドンは単なる異常通知システムではなく、「止める、呼ぶ、待つ」文化を現場に根付かせ、以下のような効果をもたらします。

品質向上と不良流出防止

製造工程において最も重要なのは、不良品を後工程に流さないことです。アンドンは、異常が発生した瞬間にラインを停止する権限を作業者に与えることで、問題を発生源で食い止めます。従来の検査工程での発見では手遅れになるケースも、アンドンによる即時停止なら初期段階で対処可能です。

例えば、部品の組立工程で寸法ズレに気づいた作業者がすぐにひもを引けば、その場で機械が停止し、数十個の不良品が生産される前に処置できます。

作業者の安全確保と心理的安全性

製造現場では、機械の異常動作や設備トラブルによる労働災害のリスクが常に存在します。アンドンは、こうした危険な状況を即座に周知し、事故を未然に防ぐ役割を果たします。

さらに重要なのは、作業者が「止める勇気」を持てる環境を整えることです。心理的安全性が高まることで、小さな違和感や気になる点も報告されやすくなり、大きな問題への発展を防げます。

トヨタでは「問題を報告した勇気」を評価する文化があり、アンドンを鳴らした作業者が責められることはありません。むしろ、隠蔽して大問題になる方がはるかに損失が大きいため、早期発見・早期対応を奨励しているのです。

チーム全体の改善文化醸成

アンドンが鳴るたびに、現場のチームは「なぜ問題が起きたのか」を考える習慣が生まれます。単なる応急処置ではなく、根本原因を追求する起点となり、継続的改善のサイクルが回ります。

例えば、特定の工程で頻繁にアンドンが鳴る場合、週次ミーティングでパレート図を作成し、頻発する問題を視える化します。そして、設備改良・手順変更・教育強化などの具体的な改善策を実施していきます。

この「視える化」と「改善」の連鎖こそが、トヨタ生産方式における継続的な生産性向上の秘訣なのです。

よくある質問(FAQ)

Q1:アンドンの英語表記は?

A:「Andon」とそのままローマ字表記します。

トヨタ生産方式の国際的な普及にともない、”Andon”は製造業界で広く通用する英語用語となっています。”Signaling system”や”Alert board”と訳されることもありますが、固有名詞として”Andon”を使うのが一般的です。海外の工場でも「Andon」という言葉がそのまま使われています。

Q2:アンドンの本来の目的は何ですか?

A:異常の即時可視化による品質向上と安全確保です。

問題が発生した瞬間に全員が認識できる状態を作り、後工程に不良を流さないことが最大の目的です。副次的に、問題を隠さない文化の醸成やチーム連携強化にも寄与します。「視える化」によって、組織全体の問題解決能力が向上するのです。

Q3:かんばんとアンドンの違いは?

A:かんばんは「生産指示」、アンドンは「異常通知」です。

  • かんばん:次に何を作るかの指示(計画的コミュニケーション)
  • アンドン:今問題が起きたことの通知(緊急的コミュニケーション)

両者は役割が異なり、補完関係にあります。かんばんで生産の流れを作り、アンドンで異常を検知するという連携により、トヨタ生産方式が成立しています。

Q4:中小企業でも導入できますか?

A:規模に応じた簡易版から始められます。

大規模なシステムでなくても、シンプルな色つきランプ+ブザー+ホワイトボード記録から始める企業も多くあります。重要なのは高度な技術ではなく「問題を即座に共有する文化」です。まずは試験的に1ラインだけ導入し、効果を確認してから拡大するアプローチも有効です。

Q5:アンドンを鳴らすと評価が下がる?

A:正しく運用すればむしろ評価されるしくみです。

トヨタでは「問題を報告した勇気」を評価します。隠蔽して大問題になる方がはるかに損失が大きいため、早期発見・早期対応を奨励する文化づくりが前提です。アンドンを鳴らした回数ではなく、その後の改善提案や再発防止の取り組みが評価されます。

まとめ

人は失敗を本能的に隠そうとします。しかし、問題は放置すればするほど大きくなっていくため、早期に失敗や異常を発見・報告することが重要です。トヨタでは失敗を視える化するしくみとして「アンドン」を取り入れており、作業者が異常に気付くと、ひもを引いてすぐにラインを止められるようになっています。

隠れがちな失敗を表に出す秘訣は、当事者を責めるのではなく、問題の真因にフォーカスすることです。職場で起こる失敗や問題の扱い方にお悩みの方は、今回紹介した例を参考にして失敗と向き合ってみてください。

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